動画ダウンロードに関する著作権法上の規制について

動画のダウンロードに関する著作権法上の規制について説明しています。著作権を侵害する動画のアップロードは法律に従って処罰の対象になります。いっぽう、動画の視聴は、処罰対象になる場合とならない場合があります。

動画ダウンロードに関する著作権法上の規制

YoukuやTudou、Youtubeなどの動画サイトと著作権の関係について考えてみました。なお、アップロードに関する法的問題はひとまずおいて、動画の「閲覧者」にかかわる問題に絞って説明します。

改正著作権法が禁止している行為とは

平成24年10月1日に施行された改正著作権法により、音楽や動画を違法にダウンロードする行為には刑事罰が科せられることになりました。

法改正であらたに刑罰の対象とされたのは、次のような行為です。

『違法なインターネット配信から,販売又は有料配信されている音楽や映像を,自らその事実を知りながら「違法ダウンロード」(録音・録画)する行為』

箇条書きに整理すると次のとおりです。

1.有料で販売されている音楽や映像であること。
2.ダウンロードして録音または録画すること。

この2つにあてはまれば、自分ひとりで見るためにダウンロードしただけでも違法です。違反した場合は、2年以下の懲役または200万円以下の罰金に処せられます。

ストリーミング再生だけなら犯罪にならない

しかし、巷では、ストリーミング再生だけなら犯罪にならないといわれています。これは正解です。

動画サイトからストリーミング再生する場合でも、データをいったんパソコンのキャッシュに保存するので、「録音または録画」することになり、形式的には著作権法違反に該当するように見えます。

しかし、この点については著作権法に除外規定があり、処罰されないことが明確にされています。

(著作権法 第47条の8)
電子計算機において、(中略)無線通信若しくは有線電気通信の送信がされる著作物を当該送信を受信して利用する場合(これらの利用又は当該複製物の使用が著作権を侵害しない場合に限る。)には、当該著作物は、これらの利用のための当該電子計算機による情報処理の過程において、当該情報処理を円滑かつ効率的に行うために必要と認められる限度で、当該電子計算機の記録媒体に記録することができる

下線部分は、キャッシュメモリへの保存を意味しています。

つまり、ユーザーが意図的に保存するのはダメだけれど、パソコンがストリーミング再生のために勝手に一時的にキャッシュするだけならば、利用者が「録音・録画」したことにはならない、とうことのようです。

したがって、動画サイトに投稿されている動画が仮に著作権を侵害するものであったとしても、ストリーミング再生で楽しむだけならば閲覧者は罪に問われないことになります。

テレビ番組のダウンロードは処罰されるか?

民放テレビ番組のダウンロードは処罰されるか?

さきほど確認したとおり、処罰されるのは、「販売又は有料配信されている音楽や映像が違法にアップロードされていることを知ってダウンロード(録音・録画)」する行為です。
すると、ここで疑問が浮かびます。

民放TV局の番組は無料で見れますから、「販売又は有料配信」されている音楽や映像に該当しない。したがって、ダウンロードしても処罰されないのではないか?

結論から言えば、そのとおり。

民放TV局の番組は、「販売又は有料配信されている音楽や映像」ではないので、違法アップロードされているものをダウンロード(録音・録画)しても罪に問われません。この点については、文化庁が次のとおり公式見解を出しています。

文化庁「違法ダウンロードの刑事罰化についてのQ&A」)
ドラマ等のテレビ番組については、DVD として販売されていたり、オンデマンド放送のように有料でインターネット配信されていたりする作品の場合は、有償著作物等に当たりますが、単にテレビで放送されただけで、有償で提供・提示されていない番組は、有償著作物等には当たりません。

この文化庁の説明を前提とするならば、
「DVD化されたテレビ番組は「有償著作物」なのでYoukuやYoutubeから違法ダウンロードすると処罰されるが、それ以外は違法ダウンロードしても刑罰はない」
ということになります。なんだか不自然な結論だと思いますが、そういうことになっています。

受信料を払うNHKの番組ならどうか?

ところで、民放と違ってNHKは受信料を払って視聴しています。そうするとNHKの番組は全部が「有償著作物」にあたるのでしょうか?

文化庁長官官房著作権課課長補佐の壹貫田剛史氏が「有償著作物」の定義について次のようなことを述べています。(引用元

封切り後の映画作品は、劇場公開中は有償著作物にあたる。その映像が違法アップロードされていた場合、劇場公開中はダウンロードすれば刑事罰の対象になる。しかし、劇場公開が終了し、DVDが販売されるまでの間は有償著作物ではない

この人の説明をTV番組に応用すると、Youkuにアップされたテレビ番組が「有償著作物」といえるか否かの判断は、「閲覧者がダウンロードしているその瞬間に、その動画が別の場所で有償で販売されているか否か」が問題になる、
ということのようです。

事例を仮定して考えてみます。

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誰かがYoukuにアップしたCSの有料放送の番組を、BさんとCさんがダウンロードしたところ、Cさんがダウンロードした17:00には、たまたまCSで再放送(有料放送)をしていた。先ほどの理屈でいくと、このケースでは再放送が始まる前にダウンロードしたBさんは処罰されず、Cさんだけ処罰されることになります。
なんだか腑に落ちない話ですが・・・

とりあえずやめておいたほうが

刑事事件になったときに法律を解釈するのは裁判官なので、文化庁の人が「だいじょうぶなんじゃない?」と言っていても、裁判官が「アウト」という可能性はもちろんあります。微妙なケースには立ち入らないほうが身のためでしょう。
また、DVD化やオンデマンドで有償提供されているTV番組を違法ダウンロードしたら処罰されることは間違いありません。
ストリーミング再生ならば無罪放免のようなので、TV番組はストリーミングに留めるほうがよさそうです。

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